お世辞にも華やかとは言えないビルディングのエレベーターに
乗せられて地上を離れること何階だろう?
「知り合いの所だから気楽にして」
「バーが苦手て言うたことあるか?」
「いや、でも征哉は居酒屋の方が好きでしょ?」
確かにどちらかと言えば大勢で飲む酒の方が征哉は好きだ。
卯佐美と飲む酒は極上だがビールを好む征哉にとっては
強いものが多く、楽しめる余裕が短い時間というのがなんだか
勿体無く感じてしまう。

「いらっしゃいませ…久し振りじゃないか?」
カウンターへ落ち着いて、若いマスターが温かいお絞りを
優雅な振る舞いで差し出してくる。
「久し振りだったか?」
「1年以上は来てないな。」
「…ぁー…」
「しかも男友達連れてきたのは初めてだな」
「友達じゃな、いッ!?…」
その先は大腿に走った痛みに遮られた。
「自己紹介してもええか?」
引き攣った笑顔が恐ろしい。
そんな事を思ってる間に会話は進んで、オーダーを促された。
「卯佐美は?」
「ぇ、あぁ、俺はジントニック頼むよ。」
「畏まりました。」





「は?お前もバーテンダーやってたんか!?」
「今の仕事に就く前は色んなバイトしてたからね。」
自身に向けられる征哉の興味が心地いい
「マジか…」
「若いうちの経験は視野を広げるってお婆さまがね」
「”様”ぁ!?お前、坊なん?」
酔いも醒める話題に征哉が捲し立てる様子を多少楽しみながら
眺めていたマスターが言葉を添えた。
「こいつの家、茶道家なんだよ。」
「さ、ど ぅ…」
「なんだよ、お前だって本家は酒作ってるだろ」
言い返す卯佐美をぼんやり眺めながら征哉の唇から零れる呟き
「お前らって同級生なんか?」
「友達って言うより大学時代からの株仲間って感じ?」
さらりと言ってライムの香る甘苦いジンを口に含んだ。
「西方もちょっと咬んでるよ。」
「竜も知らんやろな」
「だろうね。べつに、悪い事してないよ?」
笑いながらまた、くっとグラスを傾ける。
「当たり前や、あほ…」
卯佐美と出会ってもう直ぐ2年経つが付き合い始めて3ヶ月
お互いに知らない事がまだ多いと再自覚した秋も近い夜…



11.09.17