「さっぶ!鍋とかラーメンとかがええわ」
クリスマスイルミネーションが華やかな住宅街を卯佐美と
歩きながら寅乃は夕食の希望を並べる。
こんなにイルミネーションが綺麗だと夕食の会話が随分色気無く
感じて笑いさえ込み上げてきそうだ。
卯佐美はそんな事を考えながらどの店へ行こうか思案した。




「…ぁ」
歩く二人の視線に舞った雪
「クリスマスも近いし、ええタイミングで降りよる」
寒いと文句ばかりの割りに情緒を楽しむ寅乃が可愛いとか
呼吸の白い息が暖かそうだとか、夜空を見上げる仕草に誘われた
気分になったとか…どれ一つでも口にしたら怒られそうなので
許しも請わず唇を寄せた。
「…ひ、人ん家のど真ん中なんやけど…」
雪が舞いだした事で外を伺う人が多そうなこのタイミングで
仕掛けてきた卯佐美に理解が間に合わないといった表情の寅乃は
それでも怒る事も無く受け止めた。
「征哉は気にしすぎだよ?」
「お前が他人に無関心すぎなんや」
その卯佐美が何故自分にこんなにも固執するのか
今でもよくわからない。
「つか手ぇ冷た!早よメシ食いに行こ!」
握られた手を握り返して照れ隠しのように歩き出す寅乃に
卯佐美の顔が綻ぶ。
「鍋なら美味しい店わかるよ」
「そんなら鍋にしよ。わし鶏がええわ!」
雪の舞う道がこれほど美しく楽しいと感じたのは何年ぶりだろう?
握り返された左手がほんのりと温かい
幸哉と出会ってから感じるこの感情は”幸せ”ってものかな。
そうだ、クリスマスプレゼントは何にしよう
寅乃への思いを募らせながら雪舞う道を楽しんだ。


11.12.17